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そして、兄は約束通り、しかもいとも簡単に毬を取ってくれた。
やっぱり、兄はいいなと思った。
すらりと背の高く、程よい筋肉のついた、いたって健康そうな兄と比べて、ちんまりとした背に、ちょっとしたことで折れてしまうんじゃないと思うような細く、加えての弱い体。
一歳しか違わなく、葵人と碧人と同じ読みの名前なのに、どうしてこんなにも違うのだろう。
「どうしたの、葵。やっぱり、どこか具合が悪くなった?」
「あ、ううん。·····やっぱり、にいさんはかっこいいなと思って」
「ふふ·····。葵は今日もとっても可愛いよ。僕が贈った簪も着物も葵のことをより引き立たせてくれる」
思っていたことを誤魔化すために、でもいつも思っていることを口にしてみれば、碧人は簪に触れて、優しく微笑んだ表情が見られたのだから、結果的には良かった。
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