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それでも納得してない弟のことを半ば無理やりに、帯、着物、肌襦袢と脱がしていった。
普段は隠されている部分も兄に余すことなく見せつける形となり、だが、葵にとっては日常の一部であるため、そのことに対しての羞恥はなかった。
「ねぇ、にいさん……。自分でやっちゃ、だめなの?」
眉を下げ、まるで懇願するように兄に尋ねる。
ほんの一瞬、眉が潜めたようだったが、それが気のせいだと思うくらいのいつもと変わらない笑みをたたえた。
「それは、だめ」
「·····っ!」
言いながら抱き上げられ、驚いたのも束の間、桶の中へゆっくりと入れられる。
適温の湯が、体の芯までじんわりと染み渡っていく。
この湯浴みも兄がいる時ではないと入らせて貰えないので、今からすることも、自分でやらせて貰えないのは充分に分かっていたが、どうしても言いたくなってしまった。
「もう出たい」
「だめだよ。このお湯だって葵の体にいい成分が入っているのだから、ちゃんと浸からないと」
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