○プロローグ

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○プロローグ

 わたしが最初に夫の浮気に気付いたのは、8ヶ月ほど前だった。  それもほんの些細なことがきっかけだった。  最初には疑っているだけであったが、それが〈確信〉に変わったのは、その一ヶ月後であった。 「……やっぱり」  夫のかごに入っている洗濯物のシャツを見て、わたしは気が付いた。  夫は完全に浮気をしているようだ、と。 「……女の香りがする」  わたしが使っている柔軟剤ではない香りだ。それも甘ったるくて気持ち悪くなりそうな香りだ。  鼻の奥までツンと感じるその香りに、わたしは吐き気と共に怒りさえ湧いた。 「浮気しようなんて……。いい度胸してる」  わたしという妻がいながら、他の女と浮気するなんて……。信じられない。  最初は心のどこかで、夫はそんな人でないと信じていたのに……。 「……絶対に許さない」  浮気ではないと信じ、わたしは夫を信じたのに。……なのに夫は、やっぱり浮気している。  あの男に浮気したことを、後悔させてやるわ。  ーーーそして浮気が発覚してから三ヶ月後。わたしは夫と離婚することを決めた。
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