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Episode.1自由を得るために P.1
カンカーン、カンカーン。ウー、ウー。
「緊急時に鳴るアラーム・・・。一体何事だ!」
「はっ。実験棟・A区画において、被験体の子供2人が脱走したとの報告が」
「被験体の子供2人・・・。まさか、例の2人か!?今すぐにでも捕獲しろ!最優先だ!!」
―実験棟・A区画。
「ここまで来れば、警備員たちも追ってこないはず。もう少しだ、光」
「うん、ありがとう禮萌。でも、残してきた子達大丈夫かな・・・」
「大丈夫さ。あいつらも上手く逃げれてるはずだ。俺たちは今日、自由を手にいれるんだ!」
「うん、そうだね!弱気になってごめん。あともうちょっと、頑張ろう!」
邂理公国。軍事国家として栄え、国内にも軍事施設を多数所有するこの国では、「錬金術」が最先端の科学とされ、国を上げて「錬金術師」の育成に力を入れている。この研究施設も、その「錬金術師」の育成の一環として建設されたものの1つだ。ここでは、錬金術師として優秀な才能を持つ者たちを集め、国のためにより優秀な錬金術師として育成するための研究が成されているーというのは、あくまでも"表向き"の話。いや、研究が行われてはいるのは事実だが、そのやり方があまりにも非人道的なものだった。実際には、錬金術として優秀な才能を持つ者に育成するべく、素性のわからないようなアングラな孤児院から子供たちを引き取り、毎日毎日過酷な「人体実験」を子供たちに強いている・・・。それが、この研究施設での"日常"だった。素性がわからないような子供たちを集めたのは、恐らくあとでこの事実が軍や政府にバレてしまった際に言い訳がしやすいから。あまりにも自分勝手で都合のいい理由だ。当時の俺は、そんな風に思っていた。あの時、孤児院から引き取られた時に、疑うべきだったのだ。
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