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―2年前。邂理公国郊外の孤児院。 「そこをなんとか!お願いできないでしょうか・・・?」 「うちとしてはありがたいお話なんですが・・・。ただねぇ、うちの孤児院にそんな子がいるとは、とても思えないんですよ」 「それは、我々で調べさせて頂きます!ですから、どうか!この通り!」 ガバッ。 (また、あの人が来てる・・・。こんなところに一体なんの用なんだろう) 俺は生まれた時に、この孤児院の前に捨てられていた。そして、それからはこの孤児院で育てられた。食事はあるし、寝るところもある。不自由のない生活ではあったが、心のどこかでは、もっと自分の力で自由になりたい。不自由ではないが、自由は自分の力で掴みとるもの。ここでは、自由に生きてはいけない。そんなことばかり考えていた。そんな日々を過ごしていたが、ある時から孤児院に先程の男が度々訪れるようになっていた。年齢は、30代くらい。眼鏡をかけていて、いつもスーツを着ている。なんとなくではあるが、人好きのしそうな顔はしていた。だから騙されたんだと思うが・・・。この時の俺は、この人ならこの生活から解放してくれるかもしれない。自由になれるかもしれない。俺はそんな風に思ってしまったのだ。 「禮萌君、君本気で言っているの?」 「はい、シスター。俺はこの国のために何かしたいという、あの人を見て素敵だと思いました!だからお願いです!俺を連れていくように、あの人に頼んでください!!」 「人の言ったことに感銘を受けるのはいいことだと思いますよ。しかし、私からはそんなお願いはできないのですよ・・・」 「どういうことですか・・・?」 「あの人は・・・、なにやらよくわからないけれど、検査、なるものをしてその結果で連れていく子供たちを決めると・・・。そう言っているのですよ。そんな人を、私はとても信用できなくて・・・」 (どういうことなんだ・・・?検査?そんなものが、どうして必要なんだ・・・。いや、それよりも・・・) 「シスター。信用できないと言うのならば、なぜ、そんな人をこの孤児院に招いているのですか?」 「っ!!それは・・・」 俺は、なぜだかよくわからないのだが、昔から勘が鋭かった。そのせいで、よくシスターたちからは疎まれていたのだ。あの子の前では余計なことは言わないでおこう、とか、あの子の前では人に聞かれたくないような話はしない、とか。だからだろう。余計に、この孤児院にいたくないと思っていたのは。 「くそ。また、シスターに怒られちゃったぜ」 「おかえり、禮萌。災難だったね・・・」 彼は、(らいと)。この孤児院で出会い親友になった、この孤児院で唯一信頼できる奴だ。いつも俺の言うことに対して理解してくれるし、優しいし、ちょっと自己主張が弱いところもあるけどとても仲のいい親友だ。 「なぁ、お前はどう思う?あの人、そんなに信用できないような人なのかな?」 「うーん・・・。僕にはよくわからないけど・・・。でも、禮萌が自由になれるチャンスだもんね。応援しているよ」 「お前は一緒に来てくれないのか?」 「え?いやぁ、僕は・・・。それに連れていくのは、検査の結果次第なんだろ?僕は、多分落ちると思うから・・・」 「そんなことないかもしれないじゃないか!それに、お前が一緒に来れないなら俺も行かない!」 「ええっ!?僕に合わせなくても・・・。だってこのチャンス逃したら、次はないかもしれないじゃないか!どうして・・・」 「決まってるだろ!俺とお前は一心同体!親友なんだから!忘れたのかよ?」 「・・・。はは、君ってやつはほんとに・・・。わかったよ。僕も行けるようになるといいね!」 「あぁ!当然だ!」
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