涼介side弟はアイドル

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涼介side弟はアイドル

「りょうにーに?…あっくぅん、どこぉ?」 俺たちの名前を呼びながら近づいて来る可愛い足音が聞こえて来る。俺と篤哉は顔を見合わせてニヤリと笑い合うと、それぞれ隠れやすい場所へ身を潜めた。 軽い足音はテクテクと俺が隠れているカーテンの側に近寄ってきた。俺は息を殺していたけれど、りくの可愛い声が段々湿っぽくなってきたのを感じて、そろそろ見つかってやるかとカーテンの下から足を出そうとした。でもその一瞬前に、理玖の興奮した声と篤哉の優しい声が聞こえてきた。 俺は肩をすくめて分厚いカーテンの裏から出ると、腰に手を当てて篤哉を睨みつけた。案の定、篤哉に抱っこされて理玖がご機嫌だ。さっきまでやっぱり泣いていたのか、ぷくぷくの赤いほっぺたには涙の跡がついてる。 「篤哉、理玖を甘やかしちゃダメって言ったろ?大体、理玖も自分から鬼をやるって言ったんだから、最後まで頑張らないと!」 理玖は篤哉の首にぎゅっと抱きつくと、俺から目を逸らして言った。 「りょうにーに、キライ。ボク、あっくんだいすき!」 あーあ、そんな事言ったら、篤哉がまたゾッとするような甘ったるい顔をするじゃんか。最近俺は、篤哉がそんな顔をするのを直視出来ないんだ。見ちゃいけないものを見てる気がして。 大体篤哉は、普段小学部でも愛想なんて一切見せないクールキャラで通ってるのに、なぜかウチに来ると馬鹿みたいに柔らかい。まぁ、ウチの末っ子の理玖が可愛すぎるせいかもしれない。兄弟の俺でも、理玖の言いなりになってる気がするもんなぁ。 俺はため息をつくと、二人におやつを食べに行こうと先に立って歩き出した。 「なぁ、理玖。抱っこしてファミリールームへ行ったら、野村さんに赤ちゃんだってまた言われるぞ?良いのか?」 俺がそう言って揶揄うと、理玖はハッとしたように慌てて篤哉から滑り降りると、何も言わずにパタパタと走って行ってしまった。 俺がそのふわふわと髪が揺れてる後ろ姿を見ながらクスクス笑っていると、篤哉が横に並んで少し不貞腐れた表情で俺に文句を言ってきた。 「何で余計な事言うんだよ。ファミリールームまで抱っこしていきたかったのに。」 俺はチラッと篤哉の顔を見て、ため息をつきながら言った。 「お前まで理玖を甘やかすなよ。このウチで馬鹿みたいにリクちゃんカワイイーってキャンペーンが年々酷くなってるってのに。そのとばっちりを受けるの、俺が一番なんだぜ? 父さんも、あの兄さんだって、甘やかすだけなんだから。母さんはまだマシだけど可愛がり一辺倒なのは、ほぼ一緒だし。最後の砦は俺と野村さんだけだ。甘やかしすぎは本人のためにならないんだからな。」
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