お迎え

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お迎え

「へぇ、理玖がずっとスポーツクラブに通ってるのって、そんな理由だったんだ。」 僕は英明学園小学校部に入学してから仲良くしている、ミコトに言われて苦笑した。 「今は怖い夢は滅多に見なくなったけどね。でも効果はあったよ?そう言えば悠太郎は眠れないのは治ったの?」 やっぱり今も僕の側に居て、色々お世話を焼きたがる悠太郎は僕をチラッと見て言った。 「…たぶん。いや、どうだろ?」 僕と尊は、どっちなのっと突っ込みながら三人でケラケラと笑った。丁度その時、教室の前のドアから僕の大好きな声が聞こえてきた。 「理玖。用意出来たか?」 僕はグレーのランドセルを背負うと尊と悠太郎にバイバイして、僕を迎えにきてくれたあっくんの側に駆け寄った。 「あっくん!お待たせっ。あれ?涼兄は?」 あっくんはニヤニヤしながら僕に内緒話をするみたいに耳の側に口元を寄せて言った。 「ここだけの内緒だぞ?涼介、女の子に捕まって多分告白されてる。」 僕は肩をすくめて言った。 「またなの?涼兄ってあんな乱暴者で口うるさいのに、どうしてモテるのか僕、全然分かんないよ。あっくんがモテるのは凄く納得だけど。…凉兄はどうでもいいけど、あっくんが誰かとイチャイチャしてたら、僕眠れなくなるかも…。」 あっくんは僕の手を繋ぐとにっこり笑って言った。 「俺が何?よく聞こえなかったけど…。」 僕は何でもないって首を振りながら、あっくんの大きな手をぎゅっと握って下駄箱まで一緒に歩いて行った。靴を履き替えて、今日僕たちの家に送ってくれるあっくんの家の迎えの車まで一緒に歩きながら、僕はちょっと寂しくなって言った。 「あっくんも涼兄も、もう直ぐ中学部に行っちゃうんだね。僕は三年生になるけど、あっくんたちとは全然世界が違っちゃう。今みたいに一緒に帰れなくなるし、きっと彼女か彼氏とか作って、僕のことなんて忘れちゃうんでしょ?」 あっくんは困ったように僕を見下ろして、考え考え言った。 「…パッと見は違って見えるかもしれないけど。俺が理玖の事忘れるとか絶対ないから。ただ、今みたいに一緒に側に居られなくなるのは、そうかもしれない。…理玖が小さいからしょうがないんだ。理玖だって、俺のこと怖くなるかもしれないよ?」 僕があっくんの事を怖くなるとか、何でそんな事をあっくんが言い出したのかよく分からなかった。でもその事を聞いちゃいけない気がして、僕はあっくんの涼しげな横顔を見上げたんだ。
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