第1話 ズッキーニ

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

第1話 ズッキーニ

 暑くて辛いけれど夏野菜が美味しいこの時期に、職場の人からズッキーニをもらった。その人は家庭菜園をしているらしく今年はたくさん採れたため、お裾分けをしてくれたのだ。 「ありがとうございます」  なんてニコニコしながら私も大きめのズッキーニを1本頂いたが、正直いって困っている。私はそれなりに料理をするほうだが、ズッキーニは普段買わないため調理方法がわかないのだ。  食べたことはある。ちょっとおしゃれなお店で出されたときに食べたら淡白な味がしたことを覚えている。しかしお店で出された料理は華やかで真似をして作る気持ちになれない。  そんなことを考えながら家のキッチンでズッキーニと向き合っていたら母から電話がかかってきた。 「もしもし?」  母からの電話の内容は大したものではなかった。10分ほど喋ってそろそろ切ろうか、というときに私は母にズッキーニの簡単な調理方法を知らないかと尋ねた。  すると母も最近ズッキーニをもらい、調理したとのこと。これ幸いと母にその調理方法を聞いて電話を切った。最後に母から千尋は今食事を振舞うようないい人はいないの、なんてことを言われた気がしたがきっと気のせいだろう。 「じゃあ作ろうかな」  手を洗ってエプロンを身に着けて包丁とまな板を取り出して準備は完了。まずは副菜から作ろう。鍋にお湯を沸かす。正直この時期にお湯を沸かすのはそれだけで暑くなるからちょっと嫌になる。その鍋に洗ったもやしを入れてさっとゆでる。1分たたないうちにざるに移して水で冷やす。  水で冷やしている間にきゅうりを千切りに、ちくわを輪切りに切る。そして冷えたもやしと先ほど切ったきゅうり、ちくわをボウルに入れて砂糖、醤油、からしを入れて和える。私は辛めの方が好きなのでちょっとからしを多めに入れたため、ぴりっとした香りがする。皿に移して副菜の『もやしの辛し和え』の完成だ。  次に主菜の冷しゃぶを作る。暑いからさっぱりしたものが食べたい気分なのだ。お湯を沸かしている間にレタスをちぎって洗う。赤いパプリカは細切りにする。お湯が沸いたらそこに豚こまを入れて加熱する。正直この時点で暑くてちょっとつらいけれど、この後の楽しみのために頑張る。色が白っぽく変わって全体に火が通ったらざるに入れて水で冷やす。  深めのお皿にレタス、冷やした豚こま、パプリカの順でのせる。パプリカの赤が綺麗に映えていい感じだ。食べるときに和風ドレッシングをかければ主菜の『冷しゃぶ』の完成。ここまできたらあと一息。お腹もすいてきたためサクッと作っちゃおう。 「さて、今日のメインだ」  最後にズッキーニを手に取り洗って、包丁で大き目の輪切りに切っていく。そしてフライパンに油をひいて火をつける。フライパンが温まったらズッキーニを置いて塩コショウを振り弱火で片面5分ほど焼いていく。ジュウジュウと音を出しながら焦げ目をつけていくだけで、なんだか食欲がわく。  両面焼いたら最後に皿に移してからチーズをのせてレンジに入れる。母曰くフライパンの上でチーズをのせるよりもこちらの方が溶けやすくて楽だという。600Wで1分ほど温めたら『ズッキーニのチーズのせ』の完成だ。  そして冷凍庫から小分けにした冷凍ご飯を取り出してレンジで解凍する。これで今日のご飯の完成。机に持っていきお皿とお箸を並べる。我ながらレタスやズッキーニの緑にパプリカの赤、チーズの黄色と色合いも鮮やかだ。 「いただきます」  ズッキーニのチーズ焼きを早速食べてみる。美味しい、けれどなにか足りないな。チーズの濃厚な味とズッキーニの淡白な味に合うものといえば。私はキッチンから醤油をとってきてズッキーニに少しだけかける。うん、こっちの方が美味しい。  そしてもやしの辛し和えと冷しゃぶ、ご飯も口に運ぶ。ズッキーニにはまりそうだな、なんて考えながら夕飯を食べて次のズッキーニ料理を考えるのであった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!