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「そんなわけないだろ〜!ちょっと貸してみろ」
優斗が机に置いた本を俺の方に引き寄せ半信半疑で本を確認してみる。
本の表紙は茶色で少し傷もついていた。
本からは土っぽいような埃っぽいような匂いがする。
俺は端から端まで作者名を探した。
不思議なことに本を裏返しにしてみても
ページをめくってみても優斗の言う通り作者の名前が書いてないのだ。
「……本当だ、書いてない」
「でしょ?!図書室の先生にも確認したんですけどよく覚えてないって」
「お前、それでよく借りられたな」
「覚えてないけど、図書室にあるんだから学校の本だろうって言って借りさせてくれました!」
「確かに…あの人ならそう言うかもしれないな」
俺と優斗は苦笑いした。
図書室の先生は還暦が近いお婆ちゃん先生なのだ。
図書室の本全てを把握するのは難しいだろう。
ふと本に目をやると俺が本を裏返しにしてたせいか何か白い紙のようなものが飛び出ていた。
「……なんだこれ」
白い紙を引っ張ろうとした瞬間……
「おーい!みんな席につけー!HR始めるぞー!」
担任の先生が教室に入ってきた。
「すみません僕、席に戻りますね!」
先生が来たのを確認した優斗は、机にあった本を取り自分の席に戻って行った。
「あ…おう!」
俺は取り損ねた白い紙のことが少し気になったが
HRを受けているうちに次第に忘れていった。
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