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次の日は日曜日で快晴ということもあってか、野球グラウンドにもたくさんの人が来てくれて、賑わった。景品に準備した飴玉もほぼなくなり、終わりの時間を迎えた。
片付けの時間の後、校庭で後夜祭が始まった。文化祭の間に行なわれたアンケートで決まった展示部門や模擬店部門の順位が発表され、上位の部活や団体の代表者は舞台の上で表彰された。その中には圭の姿もあった。
やがて、校庭に焚き火が灯され、恒例のフォークダンスが始まった。
舞台から降りてきた圭のまわりには、圭と踊りたい女の子たちが列を作っていた。
「お前も並びたいか?」
先輩が言った。
「そんなわけないじゃないですか。そろそろ帰りましょう」
私はフォークダンスの輪に背中を向けた。
楽しげな音楽が流れる中、私達は校門を出た。
「フォークダンスってそんなにやりたいもんかな」
先輩が自転車を押しながら、ぽつりと言った。
「そりゃあ、好きな人と手をつなげるのは嬉しいんじゃないですか?」
私はそう答えた。
しばらく2人で海沿いの道を、波の音を聞きながら黙って歩いた。
「ほら」
先輩が不意に手を差し出した。
「え?」
私は先輩が何をしようとしてるのか、わからなかった。
先輩は戸惑っている私の手を握って、また歩き出した。
「嬉しいか?」
黙って歩いていた先輩が、そう聞いた。
「嬉しいですよ。でも、手をつなぐの、初めてじゃないですし…」
私はそう答えた。
「じゃあ、もう嬉しくないか」
先輩が手を離そうとしたので、私は慌てて強く握り返した。
「何度でも、嬉しいです。ずっとつないでいたいです」
私は本当にそう思った。ずっとずっとつないでいたかった。
「そうか」
先輩はそう言うと、また私の手をしっかりと握り直した。
港に停まっている船の明かりが近くなってきた。もうすぐ、港軒に着く。
港軒がもっと遠ければいいのに…。
私は心からそう思った。
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