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校舎の入り口の手前に、チラシ配りの最後の1人の男子生徒が立っていた。私はそれまでと同じように、その男子生徒からもチラシを受け取ろうとした。
チラシを差し出した手はとても大きく、指はとても長かった。私はその手の持ち主を見ようと目線を上げていった。
なかなか彼の顔まで辿り着かなかった目線がようやく彼の顔を捉えた時、彼は少し怖いぐらい鋭い目つきで私を見下ろした。そして、私と目が合うと、彼は差し出していたチラシをさっと引っ込めて、私の後ろから来た男子生徒に向かって差し出した。
え?どういうこと?私には渡したくないってこと?
私は驚いて立ち止まった。
彼から渡されたチラシを受け取った男子生徒たちはそれを見ながら私を追い越した。
「これは行かねえな」
そう言うと、今渡されたばかりのそのチラシをぽいっと捨てた。
目の前にひらひらと落ちてきたそのチラシを、私は拾い上げた。
男子硬式野球部
本日16時より野球グラウンドにて練習試合あり
飾り気のないそのチラシには、そっけなくそれだけが書かれていた。
「何それ。勧誘する気あるのかなあ。あんな怖い顔の人がいるんじゃあ、誰も行かないんじゃない?」
いずみが横から覗いて言った。
「ほんとだよね」
私はそう言いながらも、そのチラシを折りたたんでポケットに入れた。
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