初詣

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初詣

文化祭が終わり、日常が戻ってきた。学校へ行き、放課後は野球部の練習に出て、そのあと港軒へ行く。そんな日々を繰り返しているうちに、いつのまにか冬が来ていた。 冬休みに入った午後、お客さんがいない時間のことだった。 「ひなちゃんは年末年始、どうするの?」 最近、またお店で少しずつ仕事をし始めた可奈子さんが、背中でぐずる奈々子ちゃんをあやしながら私に聞いた。 「大晦日から年明け3日までは母が休みでうちにいるので、お休みさせていただけたらと思っているんですけど、お店の仕事始めはいつですか?」 「店を開けるのは4日の昼からだから、大丈夫よ。ゆっくりお母さんに甘えるといいわ」 可奈子さんは小刻みに体を揺らしながら言った。 「もう甘える歳じゃないですよ。4日は昼から来ればいいですか?」 「うん。それで大丈夫。店は4日から開けるから、3日の午後は準備があるけど、それは私達だけで大丈夫だから」 それだけ言うと、可奈子さんは2階へ上がっていった。 「一男さん、3日の午後、私もできることありますか?」 カウンターの向こうで立ったままお茶を飲んでいた一男さんに声をかけた。 「掃除とか食材の下ごしらせをするぐらいかな。俺らだけで大丈夫だから、休みなよ」 一男さんは可奈子さんと同じことを言った。 「3日の夕方には母は仕事に出かけるので、その後は私、暇なんです。家にいても1人だし。もし、やれることがあるなら…」 「そういうことなら、来たらいいわよ。暇になってからでいいから。仕事はあまりないかもしれないけど、夕飯、一緒に食べましょ」 道子さんがにこにこしながらそう言って、私の肩をぽんぽんと叩いていった。 「はい。ありがとうございます」 私はぺこりと頭を下げた。
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