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「先輩、聞きたいことがあるんですけど」
私はそう切り出した。
「うん?」
先輩は優しく返事をしてくれた。
「ずっと気になってたんですけど、先輩は私のどこを好…気に入ってくれたんですか?」
好きになってくれた、と言うのが恥ずかしくて、そう言い直した。
「そうだなあ…。スコアブックかな」
先輩は立ち止まって答えた。
「スコアブックですか?」
私はちょっと拍子抜けだった。かわいいとか美人とかは無理だけど、せめて好みだったからぐらいのことは言ってもらえるかと思っていたのだ。
「試合が終わって荷物を取りに行ったら、スコアブックが置いてあって、それがとても見やすくて、みんなのいいところがメモしてあって、これいいなあって思った」
「それだけですか?」
私は食い下がった。
「何より、他の誰よりも俺のことを褒めてあった」
先輩はにやりと笑った。
「それだけですか?本当に?私が他の人より先輩のことを褒めたから?」
「まあ、そういうことだ」
先輩はそれだけを言うとまた歩き出した。
「なんだか、ちょっとがっかり」
私はつぶやいた。
「きっかけはそれだな」
先輩がぼそっと言った。
「きっかけ?じゃあ、まだその先があります?」
私は先輩の腕を引っ張った。
「あるけど、言わない」
先輩はそう言って、またにやりと笑った。
「何でですか?聞きたいです」
「そのうちな」
先輩は答えるつもりはないようだった。
「せーんーぱーいー」
私はもう一度、先輩の腕を引っ張ってみた。
先輩は急に立ち止まった。
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