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「越見さんはこれから俺ほどではないが、あやかしを視れるようになってしまった筈。 違うか、ナユタ」
「……ええ、残念だけど」
越見さんは霊感は無い。
だがそんな常人にもきっかけさえあれば、霊感というのは宿ってしまうものだ。
生と死の境を彷徨った者や近親者の死により覚醒する者など様々。
恐らく越見さんの場合は、八尺を視た事に起因するだろう。
「八尺を視た……からか」
「そうね……」
あやかしや幽霊というのは本来別次元の存在だ。
あの世とか地獄、あるいは天国のような場所に住まう魑魅魍魎。
それがあやかし等の常人には不可視的存在である。
俺のような特別な眼や感覚を持たなければ、そもそも気配すら感じ取れないだろう。
なら何故素養も無い越見さんが八尺は視れてしまったのか。
カラクリはとても単純だ。
あやかしとて無条件に襲える訳じゃない。
襲う際には物質界。
すなわち三次元に侵入する必要がある。
その場合、霊感の無い者にも視れてしまうのだ。
「なるほど。 それがうちで働きたい理由なのね。 自分だけではなく、越見ちゃんも護りたいから」
「ああ」
これからは今までみたく、生き残るためだけに戦っていれば良い訳じゃない。
これからは誰かを護る術を身に付けなければならないのだ。
しかし他人を護る戦い方など門外漢。
だからここに来たのだ。
人間では到底太刀打ちの出来ない化け物に抗い、護るべき人を護る為に。
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