極寒の夏 極暑の晩夏

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極寒の夏 極暑の晩夏

「あれ……無いな」  チューハイが少なくなっていたのでドリンク売場の大型冷蔵庫で探してみたが、在庫が尽きているようだった。    そこで俺は一旦冷蔵庫から退出。 「店長ー、一番売れてるレモンのチューハイがもう……おっと」    店長に報告しようと小走りで向かうも、レジにはお客さんが。  何やら話している最中らしく、割って入るのは憚られた。  まあ急ぎじゃないし、報告は後で良いだろう。  終わるまでおにぎりの整頓でもしておくか。 「若い男の子が居ると、やっぱり活気があるわねえ」 「ですねー」 「越見ちゃんも良かったわねぇ。 ここら辺じゃあ、なかなか出会いなんか無いでしょう?」 「!?」  お客様、いきなり何を仰られるんですか。  そういうのやめて貰えますか、今後の業務に色々支障をきたすもんで。  ですよね、店長。 「も、ももももう! いきなりなに言うんですか! ね、百草くん!」 「はい!?」  急に話を振らないで。  そんでもって、なんでそんなに耳を真っ赤にしてるんですか。  勘違いしそうになるんで止めてください。 「そ、そうだよね、百草くん?」 「は、はぁ……まあそうですね。 まだ出会って4日ですし、それは無いかと」 「………………」  なんなのさ……。  なんでちょっと複雑そうな顔をするの?  ほんとに勘違いしちゃいそうなんですが。   「な、なんですか?」 「なんでもないから気にしないで?」  気にするよ、そんな作り笑顔されたら。  店長が何をしたいのかまったく分からない。  しかし意外にも、その答えはお客さんから聞く事となった。   「あら貴方、百草って名前なのねえ。 越見ちゃんが中学校の頃からずっと好きな男の子と同じ名前だわぁ」 「え……」 「ちょ、おばさん!?」  好きな男の子と同じ名前?
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