怪異を覗く瞳

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「ハァ……ちくしょうが……」  逃げ去ったサラリーマンの姿が見えなくなるなり、俺はブランコで項垂れながら、餓鬼を睨み付ける。  人生における悩みの種を。   「なんで俺ばっかりこんな目に……。 こんな霊能力さえなければ、きっとまともな人生送れたんだろうな……」  そう、俺にはある特異な力がある。  それは妖怪らしき存在を認識し、見ることが出来る力だ。  大した能力じゃない。  ただ妖怪が見えるだけなのだから。  だがどうにもその見えるというのは、妖怪などにしてみたらとても面白いらしい。  わざわざ寄ってきては悪戯や悪さをしていくぐらいには。  そのせいで身に覚えのない悪評が……。  ツライ。 「キキキ…………ギィッ!?」  何もかもこいつら妖怪のせいだ。  その怒りを発散する為、ベンチを蹴って餓鬼に当たり散らすと、奴らは驚いていて逃げていった。 「ざまあみろ、クソッタレどもが」  問題はまったく解決してないが、少しばかり気持ちが晴れていく。  だがそれも一瞬だけ。 「……ったく、またあんたか。 ストーカーかよ」  今度は一部始終を見ていた女の子が、何処からともなく現れたのだ。   「ひ、酷い! す、ストーカー呼ばわりなんてぇ……」  言葉のナイフが鋭すぎたらしい。  女の子は白銀の髪を地べたに垂らしながら、ヨヨヨと泣き崩れた。   しかし俺は謝るどころか、恨みのこもった視線を投げつける。 「あ、相変わらず私達あやかしがお嫌いみたいですね……。 その目を見れば分かります」 「当たり前だ、てめえら化物が居るからこんな目に遭ってんだぞ。 頼むから消えろ」 「うぐっ……。 い、いやぁ、私的にもそうしたいのですけどね? 百草さんを連れていかないと、そろそろ本気で怒られそうでして……」  知らん、勝手に怒られてろ。 「俺には関係ねえよ」 「で、ですよね~! ははは…………はふぅ……。 でしたら一つだけご忠告致します」
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