バイト探訪の旅

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 と言われたので、俺は緊張気味に。 「は、はい。 百草遥希……です。 年齢は二十四歳でして」 「百草……?」  店長さんは俺の名前を呟くと、押し黙ってしまった。  このなんとも言えない気まずい空気は何度も味わった経験がある。  アーリーマートは、自分と同じ地元の個人店らしい。  もしかしたら店長さんは、俺の噂をどこかで聞いた事があるのかもしれない。  近寄ると奇々怪々な物事に襲われる、という噂を。 「あ、あのー店長さん?」  どうせまた断られるのだろう。  そう思いながらも、俺は一抹の希望を持って沈黙を切り裂いた。  だが、結果は意外な物だった。 「ああ、ごめんなさい。 何でもないですから気にしないでください。 では早速で申し訳ないのですが、明日のお昼過ぎに面接に来て貰えますか?」 「えっ!? い、良いんですか?」  まさか面接してくれるとは。  しかも何故か店長さんの声色は明るく、どこか好意的な印象だ。 「はい、もちろんです。 こちらも人手が足りないので、来て貰えるならお願いします」 「わ、分かりました! じゃあ早速明日向かわせていただきます! ありがとうございました!」 「お待ちしております。 それでは」  店長さんは穏やかな口調でそう言うと無言になる。  こっちから切るまで切らないのだろう。  そこで俺はもう一度だけ、明日はよろしくお願いしますとだけ伝え、プツン。  通話を切ってガッツポーズをした。 「おっしゃ、やったぜ! これで食いっぱぐれる心配は……」 「うるせえぞ! 壁が薄いんだから騒ぐんじゃねえ!」 「す、すんません!」  余りの嬉しさからつい騒いでしまい、お隣さんに壁を殴られてしまった。  これだから壁の薄いアパートは……。  早くこんなボロアパートから出ていきたい今日この頃である。 「ここがアーリーマートか……。 思ったよりずっと寂れてるな」  流石は田舎町の更に郊外に建てられたお店。  周囲は田畑と古ぼけた民家のみで、肝心のお店は看板だけ取り替えられてきたのか、昭和の風情が漂っている。   「ありがとうございましたー」 「おっと、すまんの若いの」 「あ、すいません」  
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