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「そこを何とかお願いしますよ先輩!会費は僕が持ちますから!座ってるだけでいいんで!」
一度断ったにも関わらず当日になって懇願してくる後輩の長い睫毛と眉間の皺を前に、座ってるだけなら別に人形でもいいだろ…と屁理屈が頭を過ぎる。
十歳以上下の後輩が集めるメンバーのテンションについていける自信がないし、ましてや彼女なんて。以前、別れる時にやたら揉めてからというもの、恋愛に対して積極的になれないでいる。でもまぁ、愛想笑いを浮かべていればタダ飯にありつけるなら歓送迎会よりはいいか。
「はぁ…しょうがねえなあ…分かったよ」
俺の返事を聞くや否や、後輩は中学生のようにガッツポーズをした。
「っしゃあ!僕、この合コンに命懸けてんっすよ!絶対彼女ゲットすんぞ!」
何だそのチンピラみたいな物言いは…これも屁理屈同様、口には出さなかった。今の時代、何がハラスメントになるか分からないからな。
こうして俺は、人数合わせのために合同コンパへ駆り出されることになった。今思えば、この選択をしたところから、彼女とのことは始まっていたのかもしれない。神様ってのは意地悪なのか親切なのか…結局、どっちなんだろう。
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