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おにーちゃん、友達にキモい言われる
三人に上手く巻かれた俺は、最大に機嫌が悪い。
可愛い弟の為なら遅刻なんて些細なことなのに、弟からの遅刻はダメだよにノックアウト。
渋々、承諾をしたが、やっぱりかわいい謙吾との時間はできるだけ長く取りたいと言うのが、兄の主張であり、持って生まれた権限だと思う。
「キ・モ♡」
「お口が悪いぞ〜玲ちゃん♡」
荻野 玲。
ベビーフェイスの可愛い顔に似合わない台詞を吐くものだから、お返しにちゃん付けで頬を突くと、その手は払われ、可愛くガンを飛ばしてくる。
玲は、幼稚園からの幼馴染で、気心知れた仲だから、悪態を悪態で返すのは日常茶飯事。
「まぁ、由々しき事態だが、そんな事は言ってられないんだな〜」
「ニヤニヤするなキモさが上がる」
「聞きたいだろ? んじゃぁ、聞かせてやろう」
「無視かよ! う! ざっ! さっさと話せ!」
ほんと、お口が悪いな……ま、今の俺はご機嫌がいいのだから許してやるか……
カバンに入れていたエアーメールを取り出し、それを玲の前でチラつかせたが、座らせた目で「なに? それ」と棒読みで聞いてきたことに、少しテンションを上げていく。
「エアーメール♡ あさひちゃんから今日から日本の高校に通うって連絡がきたんだよなぁ〜その高校が俺と一緒っていうんだから朝からテンションばく上がりよ」
「…………啓吾……忘れてないか? この学校は男子校だけど?」
「………………は……ぁ…………?」
玲は……何を言ってるんだ? 男子校? この学校が? 愛しのあさひちゃんが来る学校だぞ?
ぽかん。とした口を開けたまま、ゆっくりと辺りを見渡せば、クラスで話してる奴も、机にうつ伏せになって寝てるやつも、可愛い顔してる奴はいても、誰一人としてスカートを履いてる奴はいない……
玲に声をかけられ、そちらを向くと、頬杖を付きニヤけた顔つきに、慌ててエアーメールの封を開け内容を確認するために開けた便箋を玲に見せる。
「ここに書いてあるだろ? 高校生活最後の年は俺と過ごせるって……」
「でも、ここは男子校、女子は入れない……もしかしたら愛しのあさひちゃんは男の子かもな〜」
「あさひちゃんは、目が大きくてくるっとした天然パーマ、色白の肌にぷくりとした頬した可愛い子だぞ? ありえない……男装女子で潜入だな」
「ドラマの観すぎだバ〜カ」
悪態をつき、頭の横で人差し指をくるくると回し手を広げて笑う玲に、俺も負けずにスラックスの後ろポケットに入れていた財布をだし、そこから出した千円札を玲の前にチラつかせながら、掛けの話を切り出した。
「あさひちゃんが男装女子に千円賭ける」
「なるほど……そんなに自信があるなら諭吉さんでも俺はいいんだけど? 俺は啓吾よりでかい男」
「よし、成立だ。泣かせてやるよ玲ちゃん♡」
「俺も啓吾くんがわんわん泣く姿を楽しみにしてるからね♡」
始業のチャイムと共に、ガタガタと机を鳴らす音が聞こえ、慌ただしく、全員んが席に付いたと同時に、教室のドアが開く。
最初に現れたのは、担任の英語教師。
ふわりとした感じの優しい先生は、このクラスのマドンナ的存在で、彼女に本気で恋をしている奴もいるぐらいだ。
誰かがいるのか、先生がドア付近に向かって教室に入るように言った後、教室へ入ってきた人物に、振り向いた玲が、口角を上げて手を差し出す。
「Hallo.I ’m Asahi Sakurada from New York」
にっこり笑い、ネイティブな英語で自己紹介したのは、俺より背が高く、日本人離れした顔立ちは、あさひちゃんと同じ名前の男だった。
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