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お兄ちゃん、兄弟の時間を邪魔される
恋とは、特定の人に強くひかれること。また、切ないまでに深く思いを寄せること……そう、辞書に書いてあったのだから間違いはない。
俺、高津啓吾は、幼稚園児にして初恋を覚えた。
相手は、父親同士仲がよく、二ヶ月という短い間だが、悪友とよく遊んだ子で、くりくりの天然パーマ、瞳は大きく、ぷくりとした頬が可愛い全力で守ってあげたくなる女の子。
さくらだ あさひちゃんだ。
勿論、告白はすませていて、恋人と言っても過言ではない……彼女が、ニューヨークへ渡米した後も親交は続いており、あさひちゃんは、俺をハニーと呼び、俺はあさひちゃんと呼び合う仲だ。
まぁ、思春期な男子ですから、セフレぐらいはいるし、童貞もとっくの昔におさらばしてる……それもこれもあさひちゃんの為! そんなセフレ女性と別れを告げ、高校生活最後の年、ニューヨークから帰ってくるあさひちゃんとの恋を進展させてやる!
「髪型よし! 顔よし! 俺って超イケメ〜ン」
「おにーちゃん、もう家を出る時間だよ?」
おにーちゃんと聞こえた声に、鏡の前で決めたポーズを崩し、ひょっこりと現れた我が愛しの弟、謙吾が現れたことで、頬の筋肉までも崩れていく。
早くって地団駄を踏む姿さえも愛おしくて、朝から見れた弟の可愛い姿に、おにーちゃんキュンキュンしちゃう♡
可愛い弟を抱き上げたまま、居間にいる親に声をかけ、玄関に置いてある鞄を拾い、謙吾が玄関のドアを開ける。
「啓吾さん! おはようございま〜す!」
「謙吾を迎に来ました」
玄関を開けたと同時に現れた学ラン姿の男二人に、呆気にとられるも、相手を認識してしまうと舌打ちに変わり、抱き上げていた謙吾が、身体を捩ってズルズルと降りてしまい、俺の腕が軽くなった。
「桃園、椿……早いんだよ! 兄弟の親密度を深める貴重な時間を奪う権利はお前たちにない!」
「はぁー……啓吾さんがいつか謙吾ワンのストーカーになりそうで怖いんですけど……俺……」
「啓吾さんの学校は反対方向で俺らの方が小学校から近いって事に納得したじゃないですか……」
頬を引きつらせ、ドン引きした顔で俺を見る桃園健流に、ため息交じりに吐き捨てた椿隆一の言葉がグサグサと刺さり、アッパーをカマされた俺の身体が膝から崩れそうになった所で、後ろポケットに入れたスマホが鳴る。
「もしもし? 玲か……あ?……俺は今それどころじゃないんだってきょ……」
二人にちょっと待ってろと言いたくて振り向いたが、その先に三人の姿はなく、近所のおばちゃんが掃除をしてるだけ……
「クソッ! やられた!」
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