1話 初めまして、妹です

10/14
前へ
/265ページ
次へ
 ここで、コンビニ前で立ち尽くしている主人公の話をさせて欲しい。  彼の名は、有宮(ありみや)李津(りつ)。身長173cmの16歳、黒髪ソフトマッシュで細身の、凡庸な男子である。  小さな頃から海外で暮らしていた彼だが、理由は単純。親が死んだから。  車の自損事故だった。  李津も同乗していたが、ほぼ無傷で救出された。  その後は父の知人に引き取られ、海外へ渡ったのだが……そこで養父母に溺愛されたのである。  テストでいい点を取ったり学校で褒められたりすれば、養母は近所の人を呼び、すぐに盛大なホームパーティを開いた。  成績優秀な李津も、テストの点数がよくないことだってある。そんなときですら「丸がついてるだけでもすごい!」と、ホームパーティ。  きっと0点でも、なにかしらでどんちゃんパフパフされるのだろう。  そんな慈愛に満ちた育ての親のことを、李津はこう思っていた。  マ ジ 、 あ り が た 無 理 。  李津はあまりはしゃぐのは好き方ではなかったし、むしろ静かに暮らしたかった。  しかしこのパリピ保護者がいる限り、それは叶わない。  そこで、身の回りのことが一通りできるように訓練した彼は、育ての親を説得し、自分だけ日本へ帰らせてもらうようにした。  母国とはいえ、日本は12年も離れていた。知らない町に向かわされ、出迎える大人もいない。 「今度こそ、ひとりきりになったんだな……」  ぽつり、と哀愁を漂わせてコンビニ前でつぶやく彼だ。  気丈に振る舞ってはいたが、まだ未成年。  きっと、心細さを感じて仕方がないのだろう――。 「っし、俺は自由だーーーっ!!」  一切、感じていなかった!  むしろガッツポーズし、ふへりと笑みを浮かべている。 「やってやったぜ!! わーはははははははははは!!」  ぽんぽん。 「ん?」 「お客さま。店前で奇声を上げられるのは近所迷惑になりますので、ご遠慮願いたいのですが」 「アッハイスミマセン……(小声)」  マナーについてコンビニ店員にガチで叱られる、李津16歳だった。
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加