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ここで、コンビニ前で立ち尽くしている主人公の話をさせて欲しい。
彼の名は、有宮李津。身長173cmの16歳、黒髪ソフトマッシュで細身の、凡庸な男子である。
小さな頃から海外で暮らしていた彼だが、理由は単純。親が死んだから。
車の自損事故だった。
李津も同乗していたが、ほぼ無傷で救出された。
その後は父の知人に引き取られ、海外へ渡ったのだが……そこで養父母に溺愛されたのである。
テストでいい点を取ったり学校で褒められたりすれば、養母は近所の人を呼び、すぐに盛大なホームパーティを開いた。
成績優秀な李津も、テストの点数がよくないことだってある。そんなときですら「丸がついてるだけでもすごい!」と、ホームパーティ。
きっと0点でも、なにかしらでどんちゃんパフパフされるのだろう。
そんな慈愛に満ちた育ての親のことを、李津はこう思っていた。
マ ジ 、 あ り が た 無 理 。
李津はあまりはしゃぐのは好き方ではなかったし、むしろ静かに暮らしたかった。
しかしこのパリピ保護者がいる限り、それは叶わない。
そこで、身の回りのことが一通りできるように訓練した彼は、育ての親を説得し、自分だけ日本へ帰らせてもらうようにした。
母国とはいえ、日本は12年も離れていた。知らない町に向かわされ、出迎える大人もいない。
「今度こそ、ひとりきりになったんだな……」
ぽつり、と哀愁を漂わせてコンビニ前でつぶやく彼だ。
気丈に振る舞ってはいたが、まだ未成年。
きっと、心細さを感じて仕方がないのだろう――。
「っし、俺は自由だーーーっ!!」
一切、感じていなかった!
むしろガッツポーズし、ふへりと笑みを浮かべている。
「やってやったぜ!! わーはははははははははは!!」
ぽんぽん。
「ん?」
「お客さま。店前で奇声を上げられるのは近所迷惑になりますので、ご遠慮願いたいのですが」
「アッハイスミマセン……(小声)」
マナーについてコンビニ店員にガチで叱られる、李津16歳だった。
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