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つむぎからの報告を受け、李津はひとまずホッと胸を撫で下ろした。今、彼が向かっている先は、例の廃工場だ。
工場の門が見えて来ると、その前に立つ少女がぶんぶんと手を振ってきた。今回、見張りと連絡役を受け持った莉子だ。
「兄ーっ! ってえええっ!?」
「? なんだよ莉子」
「えちょ、だって顔がっ!! あ、佐蔵井先輩も来てくれたんですね」
李津の隣を歩いていた少女が軽く手を上げる。
「ああ、気になったんでな」
そう言うと、生徒会長・佐蔵井絹は李津を肘でこづいた。
「まったく。あたしの依頼にあたしを動かすなんて、大したタマだよてめぇらは」
「えっ、ダメだったの?」
「呵呵。いや? そんなこたぁ一言も言ってねえな。こちらが頼んだ手前、協力できることがあるなら力は惜しまねえよ」
楽しそうに断言し、隣の男の頬に片手を添える。
「ったく、こっちを向け、りの字。そして少ししゃがめ。無事でいたけりゃそのまま目ぇ閉じな」
「拳銃とか突きつけられないよな?」
「馬鹿、てめぇのアイラインが落ちてんだよっ!」
ぐいっと、お互いの鼻息がかかる距離に顔が近づく。
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