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絹はボディバッグから綿棒を出すと、李津の目の周りの余計な汚れを器用に拭った。そしてアイライナーで、消えかけていた線を描き足す。ついでにリップもブラシで塗り直した。
おっぱい総本山がなかなか大胆で、李津は生きた心地がしなかった。
目を閉じて必死にやり過ごそうとするが、本日スクイーズを忘れてきてしまったため指先が震えてきた。
自分に触れた3人目の女子・絹に、何の感情もわかないはずがない。
「おい、動くんじゃねえ」
ピシャリとたしなめられて、李津は慌てて手を引っ込めた。無意識に手がスクイーズを求めてさまよっていたらしい。
一本の筋が通ったような落ち着いた声に、改めて気持ちが引き締まる。彼女でなければ、浮ついた心は落ち着かなかっただろう。
一方、至近距離でも特に意識するそぶりもなく、仕事人の表情で李津を見つめた絹は、ようやく満足そうに微笑んだ。
「うん、よし。これでおまえたちの望みのK-POPアイドル風の顔面と遜色……はあるなぁ。妹、すまない。あたしにはこれが限界だ」
「やっば! 本物のアイドルですよこれ! やっぱ元がいいからですかね! でも、この顔を直視してどうして先輩は無事なんですか? 顔面国宝すぎて無理ですっ!!」
「あー。一体、妹にはコレがどう見えてるんだ?」
メイクを手がけた絹の評価と妹からの評価が180度違うことに、絹は一抹の不安を覚えた。
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