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この日までに莉子が運営する李津の陽スタグラムアカウントは、1か月経たない間にフォロワー5000人になった。
ガクトのフォロワーの半分ではあるが、このアカウントからレディース二人への接触は成功している。
今回の作戦はシンプルに「推し変」。
推しになりうるアイコンには、李津自身が矢面に立つことにした。
大胆な作戦だが、ビジュは加工技術でなんとでもなる時代だ。
李津になりすまし、レディースたちとのやり取りを担当した莉子によると、レディースたちの興味が李津へ向いていることは確かである。
彼女たちを古参ファンとして、他の子よりちょっと特別扱いをするだけで浮かれてくれるのだから、言い方は悪いがチョロい案件だった。
「そうだ、そろそろ始まりそうなんですよ!」
「そうか。最後まで見届けてやるよ。行ってこい、りの字」
絹が李津の背中を優しく叩く。李津は頷くと、決戦の場所へと視線を向けた。
「兄、バチバチにやっちゃってください!」
「OK。戦いは今日で終わりだ」
莉子が選んだインフルエンサーっぽい衣装を着て、李津は廃工場へと歩みを進めた。戦へ向かう男の背中はいつもよりも大きい。スローモーションで、なんかいい感じのBGMがかかる感じのシーンである。
――そして決闘の冒頭へと、話はつながる。
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