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廃工場の女子たちはざわついた。
これから決闘というまさにその瞬間、謎のメイク男がリーダーたちの前に飛び出したのだから。
「なにあれ」「不審者なんですけど」「え、こわ」「どする、捕まえて縛り上げとく?」「てか触りたくない」「縛られて喜びそうじゃね?」
なんだろう、ちょっと惜しい顔面。雰囲気で誤魔化しているくせ、堂々とした態度が鼻につく。
しかしレディースのリーダー二人の反応は違った。
「えっ、うそ、りっきゅん!?」
「どうしてここに!?」
目をハートにするリーダーに動揺する少女たちだが、その名前には聞き覚えがあった。割と最近「ちょっと気になってるんだよね〜」と各リーダーに見せられたインフルエンサーの名だ。
それにしても、恋する女の子は盲目だというがここまでか。
以前見た陽スタのイケメンとは目の大きさも鼻の形もぜんぜん違う。しかし、自分たちもビューティーアプリにお世話になっているため、あまり加工の件には触れられない。みな、ストレスを溜め込んでイラついた。
「僕のせいで争いがおきると聞いて、いてもたってもいられなくなってしまってきみたちを止めに来た!」
そのビジュですごい自信だなと、聴衆はドン引き。もはや、ちょっと笑いをこらえる少女までいる。
けれど当事者たちは大真面目。薔櫻薇はキラリを忌々しげににらみつける。
「てめぇが呼んだのかよ」
「は? ウチじゃねーし!」
「だったらどこから漏れたんだ!?」
「やめてくれ、薔櫻薇! 争いはっ、悲しみしか生まない!」
天然男、李津の真価はここぞとばかりに発揮される。普通ではとうてい言えないセリフも、メイクで気が大きくなった男からスラスラと発せられていた。
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