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◆◇
「もはやこれまで、か」
「ま、まだわからないですから!」
一方、こちらは工場の外の佐蔵井 絹。そして必死で説得する莉子である。
ここで作戦が失敗となれば、李津がみんなを見返すチャンスは二度と来ない。
今までみんなで頑張った準備も、込めた願いも、無になってしまう。珍しく莉子が表情を強張らせているのも納得である。
『うわあっ!!』
中継していたスマホから聞こえた李津の叫びに、絹と莉子は弾けるようにして現場へと視線を戻した。
ガクトをめぐってつかみ合う二人の女たちのかたわらで、尻もちをついている李津が見える。最終手段に体当たりで抗争を止めようとして、ゲーマーの体力がかなわなかったことを物語っていた。
一瞬のうちに全てを悟った莉子は、もはや挽回は不可能だと諦めて肩を落とす。
「やれやれ、仕方ない……おや?」
今度こそ絹が仲裁に入ろうと踏み出したときだ。ひとりの男が彼女を差し置き、工場の中へと入って行った。
「あっ!」
莉子が驚くのも気に留めず、男は真っ直ぐにキャットファイトへと向かっていく。
ついに戦場へとたどり着いたとき、男の手が薔櫻薇の腕を掴み、乱暴に引き剥がした。
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