8人が本棚に入れています
本棚に追加
「んだよてめぇ!! ……って、兄貴!?」
抗争の間に入った躑躅は、薔櫻薇を見据えた。
「もうこんなことはやめろ」
横槍を入れたのが自分の兄だと気づき、一瞬は目を丸くする薔櫻薇だったが、すぐに歯を剥き出して反抗する。
「なんだよ。口きくなって言っただろ、バカ兄貴!」
しかし薔櫻薇は困惑した。
いつもなら啖呵に尻尾を巻いて逃げる躑躅だが、いまだ腕は離されない。それどころか見透かしたように見つめてくるではないか。
――キッショ。こいつ調子乗ってね!?
薔櫻薇の機嫌はさらに悪化し、眉間にしわが寄る。
対極に、躑躅の表情は一切変わらない。
「……そうだな。それを言い訳に全部李津に任せてたけど、俺が間違ってた。最初からこうやって、自分で止めれば良かったわな」
ただ、彼の瞳に静かな怒りの火がともる。
「ああ? なんだよ兄貴のくせにっ! ……痛えよ、離せよっ!」
「離さねえ!」
「は? ウザ! てめーら、このバカやっちまえ!!」
躑躅から逃れるべく、身をよじって仲間に助けを求める薔櫻薇だが、援軍のはずの少女たちは動けなかった。なにせ相手は薔櫻薇の兄だ。自分たちが手を出していいものか、どうか。
そんな敵の情けない姿を見て爆笑するのが、「卍・ザ・カヌレ」のリーダーである。
「おいおい、お兄ちゃんだぁ? あはははは、今日は参観日でちゅかぁ、薔櫻薇ちゃあん?」
「うるせえ、てめえは黙ってろ!」
「はいっ!」
凄みが効いた躑躅の声に、キラリはピシャリと黙った。彼女、「わきまえるべきところを決して間違えないのがリーダーの素質だな」と、先代に認められてトップに押し上げられた女である。
最初のコメントを投稿しよう!