10話 妹は兄をインフルエンサーにする(イラストあり)

34/41
前へ
/265ページ
次へ
「んだよてめぇ!! ……って、兄貴!?」  抗争の間に入った躑躅(つつじ)は、薔櫻薇を見据えた。 「もうこんなことはやめろ」  横槍を入れたのが自分の兄だと気づき、一瞬は目を丸くする薔櫻薇だったが、すぐに歯を剥き出して反抗する。 「なんだよ。口きくなって言っただろ、バカ兄貴!」  しかし薔櫻薇は困惑した。  いつもなら啖呵(たんか)に尻尾を巻いて逃げる躑躅(つつじ)だが、いまだ腕は離されない。それどころか見透かしたように見つめてくるではないか。 ――キッショ。こいつ調子乗ってね!?  薔櫻薇(バサラ)の機嫌はさらに悪化し、眉間にしわが寄る。  対極に、躑躅(つつじ)の表情は一切変わらない。 「……そうだな。それを言い訳に全部李津に任せてたけど、俺が間違ってた。最初からこうやって、自分で止めれば良かったわな」  ただ、彼の瞳に静かな怒りの火がともる。 「ああ? なんだよ兄貴のくせにっ! ……痛えよ、離せよっ!」 「離さねえ!」 「は? ウザ! てめーら、このバカやっちまえ!!」  躑躅から逃れるべく、身をよじって仲間に助けを求める薔櫻薇だが、援軍のはずの少女たちは動けなかった。なにせ相手は薔櫻薇の兄だ。自分たちが手を出していいものか、どうか。  そんな敵の情けない姿を見て爆笑するのが、「卍・ザ・カヌレ」のリーダーである。 「おいおい、お兄ちゃんだぁ? あはははは、今日は参観日でちゅかぁ、薔櫻薇ちゃあん?」 「うるせえ、てめえは黙ってろ!」 「はいっ!」  凄みが効いた躑躅の声に、キラリはピシャリと黙った。彼女、「わきまえるべきところを決して間違えないのがリーダーの素質だな」と、先代に認められてトップに押し上げられた女である。
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加