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躑躅に腕をしっかりと掴まれ、仲間からの助けもない。簡単に逃げられないと自覚した薔櫻薇は、ふてくされてそっぽを向いた。
だが、躑躅の説教はこれからだ。
「ったくおまえは。見ろ、こんなに大勢に迷惑をかけやがって。それに普通に不法侵入だろがよ」
「うるせーな! あたしがパクられようとも、兄貴には関係ないだろ!」
「関係あるわバカたれが!」
「ねえよ!」
「あるんだよ、おまえの兄貴だぞ!」
「はああ?」
薔櫻薇はふつふつとわき上がる苛立ちをぶつけるように、躑躅を睨みつけた。
それでも――。
「無駄だ。もう俺は、おまえから逃げねえ!」
いつも薔櫻薇から目をそらして来た躑躅が、妹の威嚇を受け止めた。
「ダルいよ、兄貴。今さら響かねーんだよ!」
今度は薔櫻薇も引かない。フリースタイルダンジョンは続く。
「はあ? 兄だぁ? 留年して、妹に学年を越されてんのに? 尊敬どころか、学校で視界に入るたび、恥ずかしいんだよ! てめぇを兄貴だなんて認めてねーから! わかったら手を離して、とっとと帰れよ!」
「おう、確かに俺はまっとうな人間じゃねえ。おまえよりも出来が悪いしなぁ」
自虐した薄笑いを浮かべて、躑躅は手に力を込める。
「だけどなあ、おまえがどう思おうが、俺たちはれっきとした兄妹だ。妹が間違ったなら、止めるのが兄なんだよ!」
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