10話 妹は兄をインフルエンサーにする(イラストあり)

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 楽しそうにガクトを追い詰める薔櫻薇(バサラ)を、一歩下がって躑躅(つつじ)は見守っていた。 「もう人様に迷惑をかけるなよ」とでも言うように、キングダムの大沢たかおよろしく腕を組んで微笑んでいた。  そんな彼だったが、ふと視線を感じて振り返る。 「なっ、なんだよ李津! 黙ってねーで声かけろよ」  ぽつん、と。  フルメイクでイケメン風に変身し、大活躍するはずだった主人公が、しょんぼりと棒立ちしていた。 「兄妹ゲンカつか、ダセェとこ見せちまったな。ははは!」  恥ずかしさをごまかして絡んでくる躑躅(つつじ)だが、そんな所作ですら李津には眩しかった。  なぜなら、妹を見つめていた躑躅(つつじ)の横顔が、いつものアホ面ではなく雄々しく見えて。近くにいたのに声をかけるのをためらってしまったくらいだから。 「いや、すごかったよ。俺はなにもできなかった」 「なんだよおまえ〜」 「……Piss off(うるせえ)」 「!? 英語でデレるってことは、カッコよかったってことか?」 「You are so annoying!(本当にめんどくせーやつだな!)」  今回の躑躅(つつじ)のツッコミはあながち間違いでもなかったので、余計にイラつく李津だ。  リアルに感じた兄妹の空気感。  他人には踏み込めない絶対的とも思える領域。  兄妹を手探りで紡いでいる李津には尊くて、うらやましかった。 「WTF(くそったれ)」  ――だが腹が立つので、それを本人に言ってやる道理はない。
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