10話 妹は兄をインフルエンサーにする(イラストあり)

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 ◆  廃工場の外で待機していた莉子とつむぎ、そして絹は、もう身を隠すことなく入り口から中をのぞいていた。 「呵呵(かか)。夢を覚まさせるためには冷水(現実)をぶっかけるのが早かったか」 「あ、あのぉ。うちのおにーちゃん、今日はあまり活躍してないように見えるけどぉ。で、でも、頑張ったのはわかってほしくてぇ〜」  泣きそうになって言い訳するつむぎに、絹は慈愛に満ちた表情で微笑む。 「そうだな。躑躅(つつじ)もりの字がいなけりゃぁ、いつまでも妹から目をそらしていただろうな」 「えっと、じゃあ」  不安げな莉子にも頷いて見せる。 「ありがとう、依頼は完了だ。礼は改めてさせていただこう。それじゃあ、あたしはここまでだ」  手を取り合い、目を輝かせて歓声を上げる妹たちを残して、絹は颯爽とその場を後にした。 …… …………  廃工場を十分に離れてから、絹はスマホを操作し耳に当てた。相手は待っていたかのようにすぐに通話に出たため、思わず苦笑を漏らす。  相手と一言二言交わしたあと、絹は小さく笑みを浮かべた。 「――賭けはあたしの負けですよ。ええ、あなたも聞いていたのでしょう? それでは夏休み、楽しみにしていますよ。ハウル嬢」
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