8人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
時刻は夜中の1時。二人はリビングに移動した。
ソファに足を乗せて体育座りするつむぎの背中側で、李津が傷の処置をしている。
ちなみに犯人は、ベッドでグースカと寝ているらしい。
「とりあえず、これで傷は保護できたかな」
「ごめんね。ありがとぉ、おにーちゃんっ」
「つか、寝ながら噛みつくかよ」
「えへへぇ。夢で美味しいもの食べてたのかなぁ」
「おまえはもっと怒った方がいいぞ」
つむぎの後頭部を軽く李津がつついた。それでも彼女は、のんきに笑った。
そんなつむぎの背中に向けて、李津は声をかける。
「あのさ、今日まで協力してくれてありがとな。躑躅の妹の暴走を止められて、よかった……と思う」
「そうだね〜」
「俺ひとりじゃ無理だったし。それと、みんなで協力してなにかを成功させるのって、初めてで。……うれしかった」
「ふへ、そっかぁ〜。おにーちゃんがうれしくてよかった〜」
「なんだよ」
「えへへ〜」
こわばっていた李津の表情が、つむぎの笑い声でやわらいだ。
この妹、初めて会ったときは笑った顔なんてほとんど見せなかったのに。最近は笑顔の方が多くて、それも彼の心を温かくする。
「えとぉ、おにーちゃん? あのね、ご、ごほうびに、あたま撫でてもらってもいいかなぁ?」
「ん? ああ、そんなことでいいのか」
「いいのぉ? ふへへ、えいっ」
体をこちらに向けるかと思ったら、後ろ向きのままコテンとつむぎが倒れてきた。その背中を胸もとで受け止めて、李津はさすがに驚く。
「おま、危ないって!」
「ん〜、大丈夫だよぉ〜。だってほら、おにーちゃんが受け止めてくれるからぁ〜」
うれしそうに見上げるつむぎと視線が絡む。
李津は思った。妹ってかわいい、と。
最初のコメントを投稿しよう!