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怒涛の週末も過ぎ、また新しい一週間が始まった。
ちまたでも有名なレディース総長の抗争を無効化した李津たちだったが、その功績が学校に広まることは特になかったので、彼の評価は以前と変わらずだった。
ただ“李津は”というだけで、妹は違った。
まずいじめに遭っていた陰気宮妹は、なぜか数日前からアイドル級の美少女へとあか抜けまくっている。
そして明るくてかわいくて、もはや学校中に名が知られているギャル宮妹も、変わらずファンは多い。
どこにいても目立つ姉妹に、生徒たちの多くが好意を寄せていた。
そんな妹の中心で登校しているのが、兄のモブ宮李津である。
「莉子ちゃんとつむぎたんだ! 朝から眼福……と思ったら、真ん中いらねえええ!」
「兄だけなんか異質くね?」
「真っ黒な妹もお兄さんに似てると思ったけど、顔を出したら莉子ちゃん側だったな」
「本当に兄妹か、あれ??」
ギャラリーが言いたい放題なのも、印象にも残らないモブのくせに、兄というだけで高嶺の花と一緒にいることへの嫉妬心からだ。
周りにヒソヒソされていることに、もちろん気づいている有宮一家。
「うぅ〜。先輩方、おにーちゃんに失礼なのでぇ〜」
「さすがに兄、舐められすぎでは」
「ん? 言いたいやつには言わせておけばいいよ。話しかけられないから、静かで快適だぞ?」
苛立たしげなつむぎと莉子だが、肝心な李津はこんな感じで、どこ吹く風。
海外では、登校中に足を引っ掛けられることも多々あったが、陰口だけで手を出されないこちらは天国のようである。
「そーいうところがダメなんですよ!」
「ダメかな? そりゃ、女子にはモテる方がいいけどなぁ」
李津のだらしない声に、妹たちはサッと無表情になる。
「やっぱりぃ、おにーちゃんはそのままでいいかなぁ〜」
「まっ、寂しければあたしたちが構ってあげます!」
「? なんなんだおまえら」
首を傾げる李津に、妹たちは両側からぴとりとくっつくのだった。
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