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「あそこまで兄の評価が低いと、フツーに腹立つんですよね。モテないのは全然いいんですよ!」
「わかる〜。おにーちゃん、かっこいいのにぅ〜」
莉子とつむぎは1年の靴箱で、登校時に聞こえた李津への悪口を思い出して不満を爆発させていた。
本人はほっとけスタンスだが、好きな人が悪く言われておもしろいはずがない。
「なにかいい方法ないですか、むぎ」
「うえぇ!? えっ、えっとぉお〜、じゃあ〜、おにーちゃんを本当にインフルエンサーにしちゃうとかぁ〜」
「女子のファンを増やしてどーするんですか。男どもに囲まれる方法求ムですよ!」
「うえぇ〜!? じ、じゃあ〜、部活に入るとかぁ〜」
「そんな爽やかで協調性がモノをいう団体に、兄が素直に入りますかね」
教室に向かいながら頭を悩ませる妹たちだったが、パタッと二人同時に足を止めた。
彼女たちの視線の先で、見知った顔が仁王立ちしている。
「おはよう、有宮妹たち」
廊下の真ん中を陣取るのは、黒髪をうしろでひとつにまとめた細身の美形、佐蔵井 絹生徒会長である。
「先日の礼と言ってはなんだが、おまえたちの悩みをなんとかしてやろう」
そう言ってクールに微笑む姿は、なんともサマになっていた。
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