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それから二人は、橋を渡った向こう側のコンビニで食料を調達することにした。
李津は遠慮する黒髪に無理やり札束を握らせて、二人分の買い物を託した。
若い茶髪のコンビニ店員が、女の子をリードするように会計するのを後ろからガン見。
なるほど、そう言う感じね。とは、李津の腹の内。
フロムアメリカンボーイ、日本での買い物のデモンストレーションついでに夕飯をゲットである。
◆
「それでぇ、『邪魔だから出てけ』って追い出されてぇ〜」
買い物を終えた二人は、コンビニの外の縁石に腰を掛けて、買ったばかりのパンを食べることにした。
その間、黒髪の少女は自分のターンとばかりに身の上を話していた。壊れた蛇口のように言葉は止まらない。
「わたし、どこに行っても、うまくできなくてぇ」
「んんっ!?」
「今日もぉ、そんな気ないのに怒らせちゃってぇ」
「なんだこれ。パンめちゃうま! ほら、あんたも食ってみ!?」
「えっ? はぐっ」
パンを口に突っ込まれて、女の子は目を白黒とさせる。ここに座ってから初めて黙った瞬間だった。
「へぇ、惣菜パンも種類豊富なんだなぁ。うちの近所のコンビニ、ハンバーガーがゲロの味するんだよ……」
「もぐもぐ」(この人ゲロ食べたことあるんだ……という顔)
「サービスもいいし、清潔だし。やるなー日本!」
「??」(あなたも日本人では? という顔)
「満足満足。じゃあ行くわ、サンキュー!」
「待ってぇ! まだ話は終わってないぅ〜!」
流れで離脱しようと試みた李津だったが、そうは問屋がおろされなかった。シャツをつかまれ、仕方なく女の子の隣に座り直す。
解放されるためには、目の前の子を納得させるしか方法はない。一本道ゲーかよと、顔をしかめる李津である。
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