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2 カレーパン
普段通りの学校だ。何の特徴もないただの高校。スポーツが凄いとか、勉強ができるとか、なにか優れたものがあるようなところじゃなく、ただそこにあるからといった理由が存在意義の、どうにもよくわからないところがそれだ。
「どうした?具合でも悪かったん?」
教室の席についたとたん、隣の席の美智子がそう言った。
「そう、すごく悪くて」
ぼくはそう答えるのが精いっぱいで、あとは前の席のやつの後頭部ばかり見つめていた。
「まあ試験休みのあとだし、たいした授業もなかったけどね。そうだ、これ渡そうと思って」
そう言って美智子はぼくに紙袋を渡した。
「なにこれ」
「マコトに借りてた参考書とそのお礼」
「お礼?」
紙袋のなかを覗くと、参考書が二冊とカレーパンが入っていた。
「なにゆえカレーパン?」
「うちの近くのパン屋のよ。超うまいんだから。あんた好きでしょ、カレーパン。毎日それしか食べてないし。もはやそれはもう人間離れしてるっていうレベルだし」
ああ、そうだっけ。そうさ、ぼくは恐ろしいほどの非人間主義者に憧れているんだ。だから毎日カレーパンなのさ。深い意味はないけどね。
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