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傾けた顔を近づけていって、予定通り腕の内側にキスをした。 すごく柔らかかった。これは予想以上だった。 だからもう一度、もう一度、と何度も口づけてしまう。 「ねえ、何回するの?」 彼女に制され、あっ、と我に返った。 「ごめん。莉乃のここ、すごく柔らかくて、つい」 あと一回くらい触れたかったなぁ、と思いつつ顔を上げると、さっきまでより確実に赤くなった気がする彼女がじっと俺を見つめていた。 「ねえ。いまのって、私もしなきゃだめ?」 瞬時にその場面を想像して首を振った。 「いや、いいよ。俺の腕なんか気持ちよくないだろうし」 「じゃあ、次はどこにしたらいいかなぁ」 「そうだね。好きなところでいいけど」 「好きなところ……」 少しの間考えたらしい彼女は、丸い目を細めて笑った。 「決めた」 「どこ?」 そう訊ねるのと同じくして、彼女の両手が俺の頬を包み込む。 「優大、大好き」 彼女が選んだのは、俺の唇だった。 唇が重なって、フローラルが香って、だらんと下ろしていた腕は、自然と彼女の腰に回った。 多分、不覚なやつだ。一人でした予習の中に、こんなシーンはなかったから。 触れ合うだけのキスがもどかしいような、でもこのままずっと、こうしているだけでもいいような、複雑な気持ちだった。 それでも腰に回した手には勝手に力が入っていて、彼女を引き寄せようとしている。 きっと本能なんだろう。やっぱり男の端くれだ。 だけど、キスの先に進むのはもう少しあとでもいいなぁ、とも思った。 だって、男の端くれとして、やっぱり大切なものは守りたいと思うわけだから。 end.
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