101人が本棚に入れています
本棚に追加
ペットボトルを持って階段を上がり、自室のドアを開けると、彼女は俺のベッドにうつ伏せで寝ていた。
どこが緊張してるんだか。
「莉乃」
呼びかけたが返事はない。
ドアを閉め、机の上に飲み物を置いた。その机の端には、家の鍵をつけてあるミニクマ太より大きなサイズのクマ太。
彼女からもらったクマのぬいぐるみは、部屋にいるこいつとキーホルダーの二体。男の部屋には不似合いなぬいぐるみだけど、実は気に入っている。名付けたのだって自分でだ。
気に入っている理由の一つは彼女からもらったことだけど、それだけじゃない。こいつがいるとなんとなくほっこりするところがいいと思う。彼女が部屋にいるみたいな感じ。
「寝てる?」
もう一度控えめに声をかけたが、返事はなかった。
だけど彼女が笑ったような気がした。
狸寝入りか。あるいは、さっきの甘い飲み物でお腹が膨れて本当に眠いのかもしれない。
俺は緑茶のボトルを持ち上げて、蓋を捻った。ごく、ごく、ごく、と飲んでまた蓋を閉めた。
それからベッドの方を振り返ると、彼女はまだ俯せのままだった。
まさか死んでないよな、となぜか急な不安に駆られ、引き寄せられるようにベッドに近づいた。そんなはずないと思いながら、どうしても確認したくなったのだ。
床に膝をついて、顔の隣に置かれた彼女の左手首をそっと持ち上げる。
温かい。
手首の内側に指の腹を当てるとちゃんと脈を感じて、ようやくホッとした。
「眠いの?」
持ち上げた手首をそっとベッドに下ろしながら、静かに訊ねる。
「ううん。優大の匂い嗅いでた」
壁に向けていた顔を持ち上げてこっちを向いた彼女と目が合った。
「変態か」
「うん」
「莉乃の好きな水あったよ」
「おっ。てか変態オッケーか。てかなんで脈測った?」
「いや、なんか、不安になって」
「不安……ふうん」
なぜかすごくニマニマされて、居心地が悪くなる。
最初のコメントを投稿しよう!