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ペットボトルを持って階段を上がり、自室のドアを開けると、彼女は俺のベッドにうつ伏せで寝ていた。 どこが緊張してるんだか。 「莉乃」 呼びかけたが返事はない。 ドアを閉め、机の上に飲み物を置いた。その机の端には、家の鍵をつけてあるミニクマ太より大きなサイズのクマ太。 彼女からもらったクマのぬいぐるみは、部屋にいるこいつとキーホルダーの二体。男の部屋には不似合いなぬいぐるみだけど、実は気に入っている。名付けたのだって自分でだ。 気に入っている理由の一つは彼女からもらったことだけど、それだけじゃない。こいつがいるとなんとなくほっこりするところがいいと思う。彼女が部屋にいるみたいな感じ。 「寝てる?」 もう一度控えめに声をかけたが、返事はなかった。 だけど彼女が笑ったような気がした。 狸寝入りか。あるいは、さっきの甘い飲み物でお腹が膨れて本当に眠いのかもしれない。 俺は緑茶のボトルを持ち上げて、蓋を捻った。ごく、ごく、ごく、と飲んでまた蓋を閉めた。 それからベッドの方を振り返ると、彼女はまだ俯せのままだった。 まさか死んでないよな、となぜか急な不安に駆られ、引き寄せられるようにベッドに近づいた。そんなはずないと思いながら、どうしても確認したくなったのだ。 床に膝をついて、顔の隣に置かれた彼女の左手首をそっと持ち上げる。 温かい。 手首の内側に指の腹を当てるとちゃんと脈を感じて、ようやくホッとした。 「眠いの?」 持ち上げた手首をそっとベッドに下ろしながら、静かに訊ねる。 「ううん。優大の匂い嗅いでた」 壁に向けていた顔を持ち上げてこっちを向いた彼女と目が合った。 「変態か」 「うん」 「莉乃の好きな水あったよ」 「おっ。てか変態オッケーか。てかなんで脈測った?」 「いや、なんか、不安になって」 「不安……ふうん」 なぜかすごくニマニマされて、居心地が悪くなる。
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