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悩みつつ、でも嫌なわけじゃないから、言うことを聞く方を選ぶことにした。
心配なのは、どこまで理性を保てるか。
「優大早くっ」
めちゃくちゃ嬉しそうにニマニマする彼女に再度促され、覚悟を決めた。と言っても、そんな大した覚悟じゃない。とりあえず冷静でいよう、みたいな。
慣れたベッドのはずなのに、乗り上げて横たわると、妙に寝心地が悪く感じた。
なんだこの、お邪魔します感は。
もちろんシングルベッドだから、向かい合うとものすごく近い。さっきのカフェで半径十五センチになったのなんかよりもっと近くに感じる今は、一体半径何センチなんだ。
これだけ近づくと、彼女から漂ってくる香りだけでもヤバイ気がした。俺の部屋にあるはずもない女の子特有のフローラルは、男の理性を崩壊させる最強アイテムに違いない。
だから目を閉じた。
3.141592653589……。
こういう時は、とりあえず円周率をお経のように唱えるといい気がする。目の前の彼女に意識を集中するなんて危険だ。
「ねえ、起きてよ」
せっかく意識を逸らせているというのに、それが気に入らなかったらしい彼女に邪魔をされた。
仕方なく目を開けると、二ヒヒ、と良からぬことを企んでいるとしか思えない顔で笑っているから、余計に心臓がドキドキしてくる。
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