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「寝るんじゃないの?」
「寝るんじゃないのっ」
「じゃあ、ゲームでもする?」
「ううん。もっと違うこと」
心臓がドクンと、大きく鳴った。
「違うことって、映画でも見たかった?」
「ううん」
しらばっくれての問いかけだったけれど、彼女の言いたいことはなんとなくわかっていた。
だけど気づかぬふり。実はそわそわしまくっているだなんて、バレたくはない。
「じゃあなに。マンガ読む?」
「読まないっ。優大はさぁ、私のこと、どう思ってる?」
唆すようにフローラルが香ったのは、彼女が駄駄を捏ねるように首を振ったから。
頬にかかってしまった髪を指先で避けながら耳にかける仕草が、スローモーションのように見えた。
「え? ……なに、突然」
正直狼狽えた。
しかも、そんな子犬みたいな目で見つめてくるって、なんで。
「私は優大のことすごく好きだよ? なんだかんだ優しいし、優大とならいいかなって、思ってる」
いいかなって、なんのことだよ……。
そう返してやりたかったけれど、そんな余裕はなかった。
そういう事だってことくらいわかったし。
すごく好きだよ、でキュンとさせられて、いいかなって思ってる、で地鳴りがしたみたいに感じた。
でも急にそんなこと言われても、もちろん嬉しいけど、準備とか、段取りとか、こっちにだっていろいろあるわけで……。
「でもずっと手出してこないから、そういうの、どう思ってるのかなぁって」
こんな問いに本能のみで答えたら、俺たちはどうなってしまうのか。
平静を保てなくなった心臓の音が、妙に大きく響いてくる。
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