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「違う場所って?」
「海外だと、手の甲にキスしたりするよね」
「ああ」
「そんな感じで。じゃあ、まずは俺から」
「うん……えっ、それ、私からもするの?」
「そうだよ、莉乃が言い出したんじゃん。それに練習なら、お互いいろいろ慣れないと」
「……わかった」
いつになく彼女が従順というか、真剣というか、それに珍しく主導権が手中にある気がして、たまには悪くないな、なんて思った。
なんだかいつも以上に彼女が可愛く思えたりもするし。
「じゃあもうちょっとこっち、おいでよ」
彼女の手を取り、距離を詰めるよう促す。
ぺたんと座ったままの彼女が、もぞもぞ近づいてきた。
このもぞもぞは、結構かわいい。狙ってかわいく見せようとしてるわけじゃないんだろうけど、照れくさそうな顔で体を左右に振っているのが、ぬいぐるみっぽいような、ちょっとおバカっぽいような。
でも俺は知っている。国語のテストで、彼女の点数が俺の点数を下回ったことは一度もないのだと。
ま、数学が俺の点数を上回ったこともないんだけど。
俺は、彼女の手を顎のあたりまで持ち上げた。
少しニヤケていたかもしれない。
「じゃあ、まずはここ」
「うん」
唇で触れた彼女の手の甲は、カサつきもなくサラッとしていた。
キスした後、持ち上げていた手を下ろす前に彼女の方を見たら恥ずかしかった。
でも、それは彼女も同じらしい。ほんのりだけど、頬が赤い気がする。こんなところにキスしたのが始めてだから、照れたのかもしれない。
「じゃあ、次は莉乃」
「うん、このくらい余裕だよ」
赤くなってるくせに、と思うと、ちょっと楽しい。
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