4/11
100人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
さて、彼女はどう反応するのか。 それを確かめようと隣を見ると、彼女の目はいつもより見開かれていた。 なかなかいい反応だと思ったら、マスクの内側の口角が上向きになった。 「……いま、めっちゃキュンとしちゃった。不覚」 「おい」 不覚の部分へ速攻ツッコミを入れる。 「へへっ。あー、先輩と付き合ってる子っていいなぁ」 「おい」 俺がいながらなんという発言。 まあ、本気で言ってるわけじゃないのはちゃんとわかってるけど、って、その解釈であってるよな……。 不安と自信は代わる代わるやってくるから、彼女と付き合い始めてからの俺は忙しい。彼女ができたらただただ毎日バラ色なんだと思い込んでいたけど、彼女なんていない中学生の頃の方が、もっと能天気にバラ色だった気もする。 「でも優大だって、先輩、って呼ばれたらなんかよくない?」 今呼んでくれたので十分いいんですけど、なんて言ったら、新しい扉を開けることになるんだろうか。それはちょっと早い気もする。まずは普通の扉を開けなくちゃ。 でも、実際かわいい後輩にあざとく先輩呼びされてゾクゾクしない確率どんだけだ。 そう考えたせいで返答に困っていると 「あ、黙った。後輩の方がいいんだ、しょぼん」 なんて彼女が項垂れた。 これがクソかわいいとわかってやってるなら、俺の彼女は確実にあざといってことになるのかぁ、と思った。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!