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「莉乃、座ってて」 「うん、ありがと」 ドリンクができるのを壁際で待ちながら、彼女を目で追った。 ぱっと見、店内の半分くらいの席は埋まっている。ソファー席に近づく彼女を見て、そこにするのか、と思ったところでカウンターの中から声をかけられ、二人分のドリンクを受け取った。 トレーを持って振り返ると、視界の中に彼女の姿がなくてハッとした。それでも、すぐに動かした目が彼女を捉えたからホッとする。 ソファー席に座ると見せかけた彼女が座っていたのは、普通に二人掛けのテーブル席だった。 高校生だからと遠慮でもしたのだろうか。 実際、ソファー席で寛いでいるのは、アッシュグレーにした髪の若者なんかでなく、年齢と共にグレーの割合が増えてきたのだろう風格のようなものまで漂わせる男女だったりした。 多分、ご夫妻。多分、ロマンスグレー。 いつか働き出してまたここに来たら、その時はソファー席にでも遠慮なく座れたりするのかな、なんて思いつつ、艶々のブラウンヘアの彼女が座る席へと向かう。
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