7月7日

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午後になっても止まない雨。 道行く人の傘の群れに紛れながら、近くのコンビニに入った。 あいつの好きなお酒とつまみを手に取る。 お互い制服を着てる頃から変わらない、あいつの好み。 毎日、当たり前のように一緒に居たのが、今は少し懐かしい。 傘とビニール袋で塞がった両手。マンションを見上げ部屋の灯りを確かめて、俺は小さく息を吐いた。 「……どうした?」 約束もしないで訪ねた俺を、少し心配そうに見つめる瞳。 逢いたくて…… その言葉は、やっぱり伝えられない。 「……暇してるだろうなと思って」 「……してるけど……雨濡れなかったか?」 少し拗ねながら、タオルを取りに行くお前の背中を追いかけるように、部屋に入った。 渡したビニール袋から、お酒とつまみをテーブルに並べると、ふわっと笑う顔が愛おしい。 いつものくだらない話と、仕事の話。 俺の仕事について、誰よりも肯定してくれるのは相変わらずだな。 この時間が愛おしい…… だから失くせない。 少し酔って、無防備になるお前の襟元から覗く白い肌。思わず目を逸らすと、グラスを持ったまま立ち上がった。 「……雨、止んだみたいだな」 誤魔化すように、窓際に立つ。 「……星は見えないだろう?」 星?……お前の一言に、窓ガラスを開けて覗き込んだ。 風に乗って流れていく雲と輝きを増す月。それより俺には、さっき見たお前の白い肌が目に焼きついて…… 熱くなった喉を冷ますようにグラスに口をつけた。 「……どーなんだよ」 何も知らず隣に並ぶお前。その肌をまた見てしまったら…… 星を探す振りをして、夜空を見上げた。 氷の溶け始めたグラス。水滴が指を濡らしていく。 「……雨が止んだから逢えるのかな」 お前の言葉に、今日が七夕だったことを思い出す。一年に一度しか逢えない恋人。 親友としてなら、こうしていつでも俺を迎えてくれるお前。 これ以上望んだらいけない…… 「………俺は………一年に一度しか逢えない恋人同士なら、友達のままがいいな……」 心に蓋をするように、呟いた。 恋人じゃなくても……… いつでも傍に居られるなら…… 「………それでも……愛を確かめ合いたい日が欲しいよ」 確かに聞こえたお前の言葉。 そっと隣を確かめる。グラスをぎゅっと握る小さな手が愛おしい。 愛を確かめ合いたい……… 毎年、短冊に書いていた願い。今ここで、その手を握ったら、お前は叶えてくれるのか?
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