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表情に乏しい端正な顔の中で、唯一光を放つブルーの瞳。
思わず見惚れてしまったチュセは我に返り、急いで言葉を繋ぐ。
「ほら、迷信かもしれないけど、色々あるでしょ、水龍様は火の気を好まないから鍛冶屋の娘は選ばないとか」
「お前の家は仕立て屋だ。残念だったな」
いつものように冷たい言葉と態度に挫けそうになるが、チュセは勇気を振り絞る。
「他にもあるわ、穢れた娘は敬遠されるとか」
「…馬鹿馬鹿しい」
「だけど、贄候補の娘が皆こぞって処女を捨てたがるの、カイザスだって知ってるでしょ」
「くだらない。浅はかな考えだ」
「くだらなくても、縋りたくなる気持ちは解るわ。贄になるのは…怖いもの」
カイザスは鼻を鳴らす。
「仕方ないだろう、この村に生まれた者の使命だ。水龍様があの湖に留まって下さるから水源が枯れずに済んでいる。毎日祈りを捧げ、十年に一度、村から娘を贄に差し出すことを条件に三百年前の先祖が契約したんだ」
そんな事はわかっている。
小さな頃から散々大人達から話して聞かせられるからだ。
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