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それは、村の娘達の中に当たり前の常識として染み込んでしまっている。
自分たちは羽をもがれた鳥だと思い込むほどに。
「カイザスは男だからだわ。贄にならずに済むから」
「それがどうした」
「私は出来れば贄になんかなりたくない。家族や友達とお別れしたくないし…好きな人とだって…」
カイザスはツカツカとチュセに近寄り、その手から鍵を奪った。
「つまらないねぇことを言うな。帰れ」
「私、何度も言ってるわ、カイザスが好きだって」
「だから何だ、俺も何度も言ってる筈だ、興味が無い」
チュセはカイザスのシャツを掴んだ。
見下ろす冷たいブルーの瞳に足がすくむ。
「離せ」
「知ってるわよ。カイザスが私に興味がないことぐらい。それどころか嫌われてることもね」
「だったら諦めろ」
「小さい頃は仲良くしてくれてたのに」
「覚えてない」
クールなカイザスだが、誰にでも冷たい訳じゃない。仲間内では笑ってふざけたりする様子も良く見かけた。
冷たく接するのはチュセにだけだ。
それこそあからさまに。
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