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フリカは臙脂色と山吹色、ウーリーは若葉色と紫、イジュナは紅色と灰色…
それぞれを特定する組紐が付いた鈴を、チリンと軽い音を鳴らして娘達は籠に入れていく。
チュセは水色と白で組まれた紐を掲げ、カイザスを待つ。
鈴は真鍮製で、下部中央に切れ込みが入っている。
そういえば、いつもポケットに入れっぱなしで、まともに音を聞いたことが無かった。
チュセは最後に聞いてみようかと手を揺らす、が、音が鳴る前に大きな手がスっと伸びて、鈴を握りこんだ。
一瞬、カイザスの冷えた青い瞳と目が合う。
カイザスは鈴を乱暴に奪い取ると、籠に入れた。
湖畔に籠を持って立つカイザスは、ジョセフの指示に従い水にそれを沈めた。
娘達は手を握り合わせ、祈る。
その心中はいかなるものか。
何に対して何を祈るのか。
チュセは、小さく息を吐く。
とにかく儀式など早く終われば良い、そう願った。
風が吹き、湖を囲む森が揺れる。
湖面に風に煽られた細かな雨が落ち、ザッと音を立てる。
チュセは一人、空を見上げた。
霧のようだった雨は小雨に変わっていた。
このまま濡れたら風邪をひきそう…
そんな事をのんびり考える。
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