儀式

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そうこうしている内に、身動ぎせず湖面をじっと観察していた男達の背中が動いた。 ジョセフに促され、カイザスがゆっくりと身を屈める。 どうやら結果が出たようだ。 微かな水音がした後、男達は振り向く。 「水龍様はこの鈴の持ち主をお選びになった」 ジョセフの厳かに告げる声の後、誰かが泣き崩れた。 カイザスの掲げた鈴、その組紐の色は、 水色と白。 皆の視線がチュセに集まる。 チュセは手を握り合わせたまま、頭を下げた。 「贄にお選び頂きましたこと感謝致します。この身を水龍様に捧げるお役目、しかと引き受けました」 号泣するフリカと、足元の覚束無いジョセフを支え、娘達が去っていく。 チュセはそれを少しだけ見送ると、湖畔に浮かぶ舟に向かい、歩き出した。 背後からカイザスが呼び止める。 「どういう事だ」 「どういう事って、そういう事よ。水龍様は私をお選びになったの」 「…お前が選ばれるわけがない」 チュセは目を瞑り、深呼吸をする。 そして、意を決して振り返った。 「カイザスも見たはずよ。私の鈴しか浮いてこなかったんでしょう?」
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