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「だから、それがおかしいと言っている。お前の鈴は、お前の鈴だけは浮いて来るはずが無かった!」
水色の目を赤くして取り乱すカイザスを、チュセは呆然と見た。
「だって、俺が細工したんだ!お前の鈴を抜き取って中に鉛の玉を入れた」
「…っ!なんでそんな事を…」
「お前を贄にさせない為だ!」
カイザスはチュセの腕を掴んで引く。
「逃げよう、チュセ。これはジョセフの企みだ。インチキだ!」
「何を言ってるの?そんなわけない…」
「あのジジイはずっとお前を標的にしてた。これでわかった。最初っからお前を売り飛ばす計画だったんだ!」
「落ち着いてカイザス。ジョセフは水守なのよ?水龍様の存在を誰より信じている事は傍で見ててわかったでしょう?儀式を穢すような真似は絶対にしないわ。それに、売り飛ばすっていったいどこへ?この村は他所とは一切交流がないのよ?」
チュセは踏ん張りながら、カイザスを説得する。
しかし、カイザスは諦めず、もう片方の手も伸ばす。
「他所の町の有力者とでも密かに繋がってるんだろう。俺は知ってる。見たんだ。ジジイの箪笥の引き出しに、札束と宝飾品がたんまり貯め込まれているのをな!」
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