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この一ヶ月のカイザスとの触れ合いが蘇り、激しい行為のその裏に隠されていた感情を想像し、目が眩むほどの罪悪感に襲われた。
「感情を押し殺してお前を抱いた。けど、内心では夢のようだった。つけ込んで何度も行為を強要して、溺れた。もう、離せない。チュセ、お前を失うなんて、俺は耐えられない」
カイザスは狂おしくチュセを抱きしめた。
激しくなる鼓動と身体の熱が布越しに伝わる。
チュセは背中に手を回し、すがりつきたくなる衝動を堪えた。
身体が震え、涙が込み上げた。
「チュセ、俺と逃げよう。村を出て他所で二人で暮らそう」
けれど、それに応えることは出来ない。
何故なら、チュセは約束してしまったから。
ジョゼフに湖へ突き落とされたあの日、チュセもまた、カイザスの命と引き換えに契約したのだ。
湖の主と。
「カイザス、それは出来ないの。私は贄だから。水龍様の望みを叶えるお役目がある」
「水龍なんていない!水守が捏造した迷信だ!」
チュセはカイザスの胸の中で首を振る。
「いいえ、本当に水龍様はいるのよ、この湖に。だって、私は何度も会っているんだから」
「…嘘だ、そんな…」
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