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「カイザス、水龍様が湖を去ることにジョセフが勘づけば、なんかしらの手段を講じてくるはずよ。そうなれば、長い時を費やして構築した解呪の術が、一からやり直しになってしまうことも有り得るそうなの」
「それを阻止しろと?そのために俺に残れというのか?!」
「ジョセフをこれ以上水守でいさせるのは危険なの。ジョセフには信仰心はあるけれど、水守の立場を利用して、ずっと村を貪ってきたのよ」
カイザスが見たという箪笥の引き出しにあった金と宝飾品、それは、贄を回避、または娘を贄に捧げたいと望む家族たちからの賄賂だ。
しかし、贄候補を選ぶのは飽くまでも水龍様だ。
やり方は鈴と同じ。水守が年頃の娘の名を書いた札を湖に沈め、浮いてきた札の娘が候補になる。
「それなのに、ジョセフはあたかも自分に贄候補の選択権があるかのように振舞ってきた。金品のみならず、若い頃は娘を差し出させていたそうよ」
大人達の間では、それは公然の秘密だった。
「あの…くそエロ老いぼれ。やっぱりさっさと殺っておくべきだった」
チュセは、唸るように呟くカイザスの背中をさする。
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